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W不倫(両者既婚)の特殊性 ─ 二つの家庭が交差する案件
浮気・不倫の調査のなかで、最も組み立てが複雑になるケースの一つが、対象者と相手方の双方が婚姻関係にある、いわゆる「W不倫」の案件です。相手方も既婚者であることが最初から分かっている場合もあれば、調査を進めるなかで判明することもあります。いずれにしても、二つの家庭が同時に関わる構造は、通常の不貞案件とは異なる視点を要します。
2001年からこの仕事を続けるなかで、W不倫案件は、調査の技術以上に、ご依頼者と私たちの判断の慎重さが問われる領域だと感じてきました。関わる人数が倍になるだけでなく、それぞれの立場と利害が複雑に絡み合うためです。本稿では、その特殊性と構えを整理します。
なぜW不倫は「長期化」しやすいのか
W不倫が長期化しやすい背景には、構造的な理由があります。双方が既婚者であるため、お互いに「家庭を壊したくない」という抑止が働きやすく、過激な行動に踏み切りにくい。また、双方が家庭を持つため相手の生活への理解が深く、無理のないスケジュールで関係を続けやすい。さらに、双方が同じ「秘密を抱える立場」にあるため、心理的な結びつきが強くなる。これらの理由から、W不倫は短期で表面化しにくく、「動きが少ないけれど確実に続いている」という、独特の難しさのある状態が続きやすいのです。
接触の頻度が低くても重みは残る
W不倫案件の特徴の一つは、接触の頻度自体は決して高くない場合があることです。月に一度や二度、限られた時間だけ会う関係が、長期にわたって維持されている。逆に申し上げると、頻度が低くとも、その接触の継続性そのものが関係の重みを示します。一年、二年と続いている関係は、頻度が月一度であっても、関係性の安定を示す材料になります。私たちは、こうした関係では、短期間に決定打を取りに行く発想から、継続性を捉える発想に切り替えて構えます。
相手方への接近に配慮する
W不倫案件で大きな論点になるのが、相手方への配慮です。相手方も既婚者である以上、相手方のご家庭の事情があり、相手方の配偶者の方の状況があります。調査の動きが、相手方のご家庭に不要な波紋を広げないよう、慎重な配置を心がけます。ご依頼者の側から「相手方の配偶者にも事実を知らせたい」というお気持ちが出てくることもありますが、これは慎重に判断すべき問題ですので、後の節で改めて触れます。
「お互いの家庭への影響」を見通す
W不倫案件では、調査結果がもたらす影響が、ご依頼者の家庭だけでなく、相手方のご家庭にも及ぶ可能性があります。ご依頼者が慰謝料請求や離婚協議に進めば、相手方のご家庭にも影響が生じることが少なくありません。双方の家庭にお子様がいる場合の波及もあります。私たちは、ご相談の段階でこれらの可能性をお伝えし、ご依頼者がどこまでを見通してご判断されるかをご一緒に考えます。「相手方の家庭がどうなるかまで自分の責任ではない」というご判断もあり得ますが、見通しを共有したうえでのご判断であってほしいと考えています。
双方からの慰謝料請求の可能性
W不倫案件で特に複雑になりやすいのが、双方の家庭から相互に慰謝料請求が行われる可能性です。ご依頼者の側から相手方を訴える流れがある一方で、相手方の配偶者の側から、ご依頼者の配偶者に対する請求が起きることもあります。お互いの家庭が同じタイミングで離婚協議に入ることもあり得ます。こうした複雑な状況になりやすいため、W不倫案件では弁護士の先生との連携が、通常以上に重要になります。調査会社単独で扱える範囲を超える論点が、最初から組み込まれているのです。
相手方の配偶者の方への通知の判断
W不倫案件のなかで特に判断の難しい問題が、「相手方の配偶者に事実を知らせるかどうか」です。ご依頼者の側からは「あちらの家庭にも知る権利がある」というお気持ちが出てきますが、相手方の配偶者の方は、これまで何も知らずに生活してこられた第三者でもあります。通知をめぐる判断は、感情だけでなく、慰謝料請求の戦略や双方の家庭への影響など、多くの要素が絡みます。私たちは、こうした判断は弁護士の先生と十分に擦り合わせて決めていただくよう、強くお勧めします。調査会社としては、相手方の配偶者の方に直接お伝えするような動きには、原則として関わりません。
結びに
W不倫案件は、二つの家庭が交差する構造を持つため、調査の組み立ても結果の活かし方も、通常以上の慎重さが求められます。長期化しやすい関係の理解、接触頻度の読み方、相手方への配慮、お互いの家庭への影響の見通し、双方からの慰謝料請求の可能性、通知の判断。これらを一つひとつ丁寧に扱うことで、複雑な案件もきちんと前へ進みます。誰の人生も軽くは扱わない。この基本姿勢が、W不倫案件における中心の構えだと考えています。