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デジタル痕跡と現場調査の組み合わせ方 ─ どこまでが調査会社の領分か
浮気・不倫の調査において、デジタル痕跡をどう扱うかは、近年もっとも判断の難しい論点の一つになってきました。スマートフォン、SNS、家計の電子明細。生活のあらゆる場面に痕跡が残るようになり、それを調査にどう活かすかが、重要な課題になっています。
2001年からこの仕事を続けるなかで、デジタル痕跡の扱いには、法的な線、倫理的な線、技術的な線という三つの線を意識する必要があると感じてきました。本稿では、調査会社の領分はどこまでなのかについて、考え方を整理します。
「ご依頼者が法的に得られる情報」までを扱う
基本原則は、「ご依頼者ご自身が法的に得られる情報」までを取り扱う、という線です。家計を共有する夫婦間で、ご依頼者の名義あるいは共有名義のクレジット明細や共有口座の記録など、ご依頼者が見ることに法的な問題のない情報です。一方、配偶者個人名義のスマートフォンの中身や、配偶者個人のSNSの非公開部分などは、ご本人の同意なしには見られないものが含まれます。こうした情報の取得を、私たちのほうから促したり、技術的な手段で取りに行ったりすることはありません。線を超えると、ご依頼者ご自身が法的なリスクを背負うことになります。私たちは、線の手前で踏みとどまることが、ご依頼者を守ることだと考えています。
正当に得た情報から「見立て」を作る
ご依頼者が正当に得られたデジタル痕跡は、現場調査の見立てを作る材料として活用できます。痕跡そのものが証拠になるわけではなく、痕跡から見立てた可能性を、現場で実際に確認する。この二段構えが、安定した調査の組み立て方です。
SNSの「公開部分」の活用
SNSについては、ご本人や相手方が公開設定にしている部分は、確認することが可能です。誰でも見られる情報ですので、参考情報として活用することに法的な問題はありません。ただし、公開情報は断片的で、全体像を示すものとは限りません。決定打にはなりにくいけれど、見立てを補強する材料として有効、というのが実務上の位置づけです。なお、なりすましや偽アカウントで相手方に接近し情報を引き出すような手法は、私たちは行いません。法的にもグレーですし、調査の信用度を根本から損なう手法だと考えています。
「アプリ内のメッセージ」には踏み込まない
最もよく寄せられるのが、「配偶者のメッセージアプリの中を見られないか」というご質問です。これに対する答えは、明確に「いたしません」です。技術的に可能かどうかではなく、それを行うこと自体が、不正アクセス禁止法やプライバシー侵害の問題に触れるからです。仮に得られたとしても、不正に得た情報は、家庭裁判所や訴訟の場で証拠として扱うのが難しい場合があります。違法な手段で得た材料は、後で重荷になる可能性が高いのです。私たちは、デジタルの中の言葉ではなく、現実の中の事実を記録することに徹します。
位置情報・GPSの取り扱い
近年ご相談が増えているのが、GPSや位置情報の活用です。これらは、法的な線が変化してきている領域です。夫婦間で合意のうえ使っている家族用の位置情報共有なら、共有された情報として扱えます。一方、相手の同意なくGPS機器を取り付ける行為は、近年の判例の動向もあり、慎重に判断すべき領域とされています。私たちは、最新の法律実務の動向を確認し、弁護士の先生のご意見も伺いながら、案件ごとに判断します。
結びに
デジタル痕跡と現場調査の組み合わせは、現代の不貞調査における設計の中心です。法的に得られる範囲の痕跡から見立てを作り、現場で確認する。本人同意のない技術的手段やアプリ内のメッセージには踏み込まず、現場での記録に最終的な判断材料の質を委ねる。技術が進化しても、調査会社が守るべき線は変わりません。守備範囲を明確に保ち、その範囲のなかで全力を尽くす。この姿勢が、結果としてご依頼者の利益を守ります。