コラム・
インフォメーション

  • 「隠れた相続人」の調査 ─ ご家族の知らない事実が浮上する時

    相続のご相談を伺うなかで、ご家族の方々にとって極めて大きな衝撃を伴うのが、「ご家族の知らない相続人」の存在が浮上する場面です。お亡くなりになった方の戸籍を遡って取得していくなかで、ご家族の方々が知らなかったお子様、認知された方、養子縁組されていた方などの存在が、明らかになることがあります。

    2001年からこの仕事を続けるなかで、こうした「隠れた相続人」をめぐるご相談を、繊細に受け止めてきました。本稿では、このテーマについて、お伝えします。

    「ご家族の知らない事実」が出てくる構造

    ご家族の方々が、お亡くなりになった方について、すべての事実を把握しておられるとは限りません。過去のご結婚で生まれたお子様、若い頃のお付き合いの相手とのあいだのお子様(認知されているお子様)、養子縁組をされていた方、ご家族の方々に伝えられていない過去のご事情でつながりのある方。これらは、お亡くなりになった方のご事情のなかで、ご家族にお話しになることなく過ごしてこられた可能性があります。ご本人にしてみれば、「家族に話す機会がなかった」「話すことができなかった」「いずれ伝えようと思っていた」というご事情があったのかもしれません。けれども、お亡くなりになった後、戸籍によって事実が明らかになる時、ご家族の方々のお気持ちは、大きく動かされます。「父にこんな子がいたなんて、知らなかった」「母にこんな過去があったなんて、初めて聞く」「兄に養子縁組の関係があったなんて、誰も話してくれなかった」。これらは、ご家族にとって深い衝撃を伴うお話です。

    戸籍からたどる相続人の範囲

    相続人の範囲は、お亡くなりになった方の戸籍を、出生から亡くなるまで遡って取得することで、確定されます。法律実務上、相続人の確定は、弁護士の先生、司法書士の先生のご担当領域です。除籍謄本、改製原戸籍、戸籍謄本などを、必要な範囲ですべて取得する必要があります。この過程で、ご家族の方々がご存知でなかった相続人の存在が、戸籍上で明らかになることがあります。ご家族の方々のお気持ちのなかで、こうした事実をどう受け止めるかが、最初の大きな課題になります。動揺されるのは自然なお気持ちです。お一人で抱え込まれず、心のケアの専門家、ご親族のなかで信頼できる方とのお話、必要に応じて専門家との連携のなかで、整理していただきます。

    相続人の所在が分からない場合

    戸籍によって相続人の存在は確認できても、その方の現在の所在が、ご家族の方々の側で分からないケースが多くあります。長年連絡が途絶えている、過去のご結婚の相手と離婚された後に消息が途絶えている、海外に移住されている、ご結婚や養子縁組で姓が変わっていて追えなくなっている。法律実務上、相続の手続きを進めるには、すべての相続人の方を関係者として含む必要があります。所在が分からない方を放置することはできません。この場面で、調査会社による行方調査が、重要な役割を果たします。長年経過している案件では、難易度が高くなりますが、不可能ではないことが多くあります。なお、具体的な所在の絞り込みの手順は、当事務所が長年の経験から積み上げてきた領域ですので、ここでは詳細を控えます。

    ご家族にどう伝えるかの繊細さ

    隠れた相続人の所在が確認できた後、もうひとつの繊細な課題が、その事実をご家族の他の方々にどう伝えるか、というお話です。ご相談者ご自身が、最初に隠れた相続人の存在を知った場合、他のご親族の方々(ご兄弟、ご姉妹、ご親戚など)にこの事実を伝える必要があります。ご家族のなかには、衝撃を受けやすい方、ご病気でショックを避けたい方、過去の経緯を知っておられて受け止め方が異なる方など、さまざまな方がいらっしゃいます。「いつ、誰に、どんな言葉で伝えるか」を、ご相談者と私たちと、信頼できる専門家(弁護士の先生、家族療法の専門家など)で、慎重に組み立てます。「真実を明らかにすること」と、「ご家族の方々を傷つけないこと」のあいだのバランスを、繊細に整えていただきます。

    隠れた相続人との関わり方

    ご家族の方々の側で隠れた相続人の存在が分かった後、その方ご自身との関わり方も、重要な論点になります。法律実務上は、相続人として手続きに含む必要があります。けれども、人間関係としては、ご家族の方々と隠れた相続人の方は、これまでお付き合いのない方どうしです。突然、相続の手続きのために連絡を取られることになる隠れた相続人の方のお気持ちも、複雑なものです。「自分の存在を知っている家族がいたなんて、聞いていなかった」「相続のために連絡を取られて、戸惑っている」というお気持ちが、自然に生じます。弁護士の先生を介した正式なご連絡が、双方にとって望ましいことが多くあります。直接ご家族からのご連絡は、感情的に難しい場面になりやすいのです。弁護士の先生が、相続の手続きの説明、相続放棄の選択肢の説明、必要な書類のやり取りなどを、双方に対して中立的な立場で進めてくださいます。

    相続放棄という選択肢

    隠れた相続人の方が、相続の手続きへの参加を望まれず、「相続放棄」を選ばれるケースもあります。相続放棄は、法定相続人としての権利を、家庭裁判所の手続きを経て放棄する選択です。これは、その相続人の方ご自身のご判断に委ねられています。ご家族の方々から、隠れた相続人の方に対して「相続放棄をしてほしい」と申し出ることは、ご家族のお気持ちとしては自然かもしれません。けれども、相続放棄を求めることそのものは、相続人の方の意思を不当に拘束することにつながる可能性があり、慎重に扱うべき領域です。弁護士の先生のご助言のもとで、ご家族と隠れた相続人の方とのあいだで、適切なお話し合いを進めていただきます。

    ご家族の心のケア

    隠れた相続人の存在が判明した案件で、ご家族の方々の心のケアは、極めて重要な要素になります。「お亡くなりになった方への理解」「ご家族の歴史への向き合い方」「これからのご家族関係のあり方」、これらすべてが、揺さぶられる経験です。「お父さんは、なぜ私たちに話してくれなかったのだろう」「お母さんは、どんな思いで過ごしてきたのだろう」「家族として、これまでの記憶をどう受け止めればよいのだろう」。これらのお気持ちは、お一人で抱え込まずに、信頼できる方と少しずつお話しいただくことが大切です。臨床心理士、公認心理師、家族療法の専門家、宗教的な相談先、ご親族のなかで信頼できる方とのお話、これらが、心の整理を支える場になります。調査会社としての私たちは、心のケアそのものを担うことはできませんが、必要な専門家へのお繋ぎを、お手伝いします。

    結びに

    「隠れた相続人」の調査は、ご家族の知らない事実が出てくる構造、戸籍からたどる相続人の範囲、所在が分からない場合の対応、ご家族にどう伝えるかの繊細さ、隠れた相続人との関わり方、相続放棄という選択肢、ご家族の心のケア。これらすべてが、繊細なご判断を要する領域です。長くつくばで仕事を続けてきて、こうしたデリケートな相続案件を、ご家族の方々のお気持ちを尊重しながら、丁寧にお手伝いしてきました。戸籍から思いがけない事実が浮上し、ご家族の方々のお気持ちが揺れていらっしゃる段階で、まずはご相談ください。

メール相談 LINE相談