コラム・
インフォメーション
-
「やり直し」を、責めない姿勢
やり直し案件でお越しになる依頼者の方の多くは、ご自分を責めていらっしゃいます。「最初の事務所選びを間違えた」「もっと慎重に選べばよかった」「お金と時間を、無駄にしてしまった」。こうした自責の念を、抱えていらっしゃることがあります。本稿では、当事務所がこの自責のお気持ちにどう向き合っているかを、整理してお伝えします。
「最初に来ていただければ」と、言わない理由
当事務所では、「最初に来ていただければよかったのに」という言葉を、決して口にしません。この言葉は、依頼者の方の自責のお気持ちをさらに深めてしまうからです。最初の選択は、その時の情報と判断材料のなかでなされた最善のものだったはずです。後から振り返って「もっと良い選択肢があった」と気づくことと、その時の判断を責めることは別のことです。私たちは、依頼者の方の最初の選択を、責めるべき対象とは見ません。
依頼者の方の責任ではない
前稿でもお伝えしましたが、最初の事務所選びでの失敗は、依頼者の方の責任ではなく、業界の構造的な問題が背景にあります。広告の派手さ、契約の急かし、ランキングサイトの不透明さ。こうした業界の構造が、適切な選択を難しくしている面があります。依頼者の方が「悪い選択をした」のではなく、業界の構造が「適切な選択を難しくしている」のです。
「責めない」が、第一歩
やり直し案件で、最初の対応として大事なのが、責めないことです。過去を責めても、何も変わりません。今、目の前にいる依頼者の方を、これからどう支えるかが、すべてです。責められた依頼者の方は、ますますご自身を追い詰めてしまいます。それは、立て直しを前に進めるうえで望ましいことではありません。
他事務所の批判も、しない
当事務所では、依頼者の方が最初に依頼された他事務所の批判も、しません。依頼者の方が、最初の事務所での経験を率直にお話しくださることはあります。それを、客観的な事実として受け止めます。「酷い事務所ですね」と同調するような姿勢は、取りません。他社批判の応酬は、業界全体への信頼をさらに損ねるだけで、依頼者の方の利益にはなりません。
同時に、起きたことを構造的に把握することは怠りません。何がどう進んで、どこで何が起きたか。その流れを冷静に整理することが、立て直しの設計に直結します。批判ではなく、構造の理解。これが、当事務所の姿勢です。
今、目の前の方を、支える
やり直し案件で、当事務所が向き合うのは、今、目の前にいる依頼者の方です。過去を責めるのではなく、これからどう進むかに集中する。これが、当事務所の姿勢です。過去の調査でうまくいかなかった事実は変えられません。けれども、ここから先の歩み方は、まだ依頼者の方ご自身が選べます。その選択を支えることが、私たちの仕事です。
依頼者の方の感情を、受け止める
やり直し案件でお越しになる依頼者の方は、独特の感情を抱えていらっしゃいます。怒り、後悔、悲しみ、不信、疲労、そして「もう一度信じてみたい」というかすかな希望。これらが入り混じった状態で、ドアを開けてくださいます。感情を否定するのではなく、まず受け止めることが、対話の出発点です。「お話しいただいて、ありがとうございます」「お辛い経緯でしたね」。そうした基本的な受け止めから、少しずつご相談を進めてまいります。
最初の事務所からの引き継ぎも、率直に
最初の事務所から、調査結果や報告書を引き継ぐかどうかも、率直に整理します。「最初の事務所のものは、全部捨てて、ゼロから始めましょう」と無闇に言うことはしません。活かせる部分があれば、活かす。これが、現実的な対応です。前回の調査でかかった費用と時間が、完全に無駄になったわけではないことを、できる限り示していきます。
お金の問題を、率直に
やり直し案件で、避けては通れないのが、お金の問題です。依頼者の方の経済状況を踏まえずに、追加の調査を勧めることはしません。前回ですでに相当の費用を使っておられる方が多いので、残された予算で何ができるかを率直にお話しします。「いくらかかってもいい」とおっしゃる方にも、現実的な範囲を共有することが、長期的なご依頼者の方の利益になります。
立て直しが難しい場合もある
業界経験者として、率直にお伝えしておきます。やり直し案件で、当事務所でも立て直しが難しい場合があります。対象者の警戒度がすでに極めて高い場合、前回からの時間経過で状況が大きく変わっている場合、ご依頼者の方の心身に十分な余裕がない場合。これらが重なると、立て直しの難易度はさらに上がります。「お引き受けします」と安請け合いをすることは、しません。それが、結果として依頼者の方を傷つけるからです。
「動かない」選択肢も、提示する
やり直し案件でも、「動かない」選択肢を率直に提示することがあります。冷却期間を取る、まず弁護士の先生にご相談いただく、心のケアを優先する。こうした「すぐには調査を動かさない」選択が、結果としてご依頼者の方の利益になることがあります。「もう一度、調査をしましょう」と無闇に勧めないことが、依頼者の方への誠実さです。
諦めずに来てくださったことへの感謝
当事務所が、最後にお伝えしたいことがあります。一度失望されたのに、諦めずに、もう一度ご相談くださったこと。これに、当事務所は深く感謝しています。再びドアを叩いてくださった勇気を、私たちは大切に受け止めます。2001年から続けてきた事業者として、こうした方々に応える責任を、感じています。
結びに
やり直し案件における「責めない姿勢」は、立て直しの土台です。過去を責めず、他社を批判せず、今、目の前の方を支える。この基本姿勢を貫くことが、長くこの仕事を続けてきた者の役割だと考えています。