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妊娠・出産後に「妻帯者だった」と判明したケース ─ 信頼を裏切られた後の歩み
最も心を痛めるご相談のひとつが、お子様を妊娠あるいは出産された後で、お相手の方が実は妻帯者だったと判明されるケースです。誠実に交際してこられたつもりが、実は相手の方には別の家庭があった。「いずれ結婚する」「今は事情があるが必ず一緒になる」と言われていた言葉が、すべて嘘だった。気づいた時には、すでに新しい命がご自身のもとに生まれている、あるいは生まれようとしている。
2001年からこの仕事を続けるなかで、こうしたご相談を伺うたびに、ご依頼者の苦しみの深さを思います。最初に申し上げます。この状況に陥ったことは、ご依頼者の責任ではありません。「もっと早く確認すべきだった」「自分が騙されやすかった」と、ご自身を責めないでください。誠実に向き合ってこられた方が、信頼の前提を裏切られただけです。
「気づいた瞬間」の混乱
お相手が妻帯者だったと気づかれた瞬間、ご依頼者の頭の中では、いくつもの感情と疑問が一度に押し寄せてきます。これまでの交際で交わされた言葉のすべてが、別の意味を持つように感じられる。お子様を妊娠したと伝えた時の相手の反応、出産を一緒に迎えてくれた時の表情、これからの生活を語り合った時間。それらすべてが、何だったのか分からなくなる。この時期は、判断を急がない方がよいと、お伝えしています。気づいた直後に大きな決断をすると、後で揺り戻しが来ることが多くあります。まずは、信頼できる場所でお話しすることから、ゆっくり始めていただきます。
事実関係の確認 ─ 「本当に妻帯者なのか」
ご依頼者が「妻帯者だったらしい」と気づかれるきっかけはさまざまです。相手の知人からの情報、SNSでの偶然の発見、相手のスマートフォンを見た時の偶然の表示、相手のご家族からの連絡など。これらは、確たる事実というよりは、強い疑念を生むきっかけです。本当に妻帯者なのか、もし妻帯者であれば、その婚姻関係がいつから続いているのか、お子様を授かった時期と婚姻関係の時期がどう重なるのか。事実関係の確認が、まず必要になります。調査会社の役割として、相手の方の戸籍上の身分関係を直接調べることは、原則としてできません。けれども、相手の方の生活実態(自宅とされる場所での生活、ご家族の有無)を観察することで、ご家庭の存在を間接的に確認することは可能な場合があります。法律実務上の身分関係の確認は、弁護士の先生のご助力のもとで、正規の手続きを経て行われることになります。
婚姻関係の時期と「不貞行為」の論点
事実関係を整理する過程で、いくつかの法律実務上の論点が浮上します。相手の方が婚姻関係にあった時期と、ご依頼者との交際が重なっていた期間。これは、相手の方のご家庭の側からの慰謝料請求の可能性に関わる論点だと伺っています。ご依頼者が「相手の方が独身だと信じていた」場合と、「途中で気づいていた」場合での、法律的な扱いの違い。これも、法律実務の場面で論点となる可能性があると伺っています。お子様の認知と養育費の問題。これは、相手の方の婚姻関係とは別の論点として、お子様自身の権利に関わる手続きになります。これらの論点は、いずれも弁護士の先生のご判断と手続きが必要な領域です。
「相手の家庭からの慰謝料請求」への備え
このケースで最も依頼者を苦しめうるのが、相手の方のご家庭の側からの慰謝料請求の可能性です。相手の方の配偶者の方が、ご依頼者の存在を知った時に、相手の方の側に対しても、ご依頼者に対しても、慰謝料を請求してこられる場合があります。法律実務上、不貞行為の認定に関わる論点として整理されると伺っています。ご依頼者が「相手が独身だと信じていた」場合、いわゆる故意・過失の論点で、請求が認められない、あるいは減額される場合もあるようです。詳細は、必ず弁護士の先生にご相談ください。大切なのは、相手のご家庭から請求があった場合に、慌てて単独で対応しないことです。書面が届いた段階で、すぐに弁護士の先生にご相談いただきます。
お子様の認知と養育費
お子様の認知と養育費の論点は、相手の方が妻帯者であったかどうかとは別の、お子様ご自身の権利に関わる重要な問題です。相手の方が、お子様の生物学的な父親である場合、たとえご自身の家庭を維持されたとしても、認知の請求や養育費の請求は、別途進められる場合があると伺っています。これは、お子様の将来の生活を守るために、極めて重要な手続きです。前稿で触れた論点と同じく、必ず弁護士の先生のご助言のもとで進めます。ご自身の感情とは別に、「お子様のための手続き」として、冷静に進めていただく視点が大切になります。
ご依頼者ご自身の生活基盤を守る
このケースで、調査会社が直接お力になれる領域は限られていますが、ご依頼者の生活基盤を守るための情報整理は、お手伝いできる範囲です。ご依頼者ご自身の現在の住居、お仕事の状況、収入、お子様の養育環境、ご家族からの支援の可能性。これらを整理することで、これから取れる選択肢の輪郭が見えてきます。並行して、行政の支援制度の活用も、生活基盤を守る重要な手立てです。母子家庭への各種支援、児童扶養手当、医療費助成、保育料の減免、住宅支援など、お住まいの市町村でご利用いただける制度があります。
心のケアの専門家との連携
このケースは、ご依頼者の心に深い傷を残します。信頼していた相手に裏切られた事実、自分が知らないあいだに別の家庭の侵害者の立場に置かれていた事実、お子様の将来をお一人で支えていかなければならない現実。これらが重なって、心の負担が極めて大きくなります。心のケアの専門家にご相談いただくことを、強くお勧めしています。臨床心理士、公認心理師、精神科医、女性のための相談窓口、母子相談の窓口など、お住まいの地域に複数のご相談先があります。
お子様への伝え方
お子様への伝え方も、いずれは向き合うべき重い問題です。すぐに伝える必要はありません。お子様の年齢、ご依頼者ご自身の心の準備、お子様を支える環境の整い方によって、伝える時期と方法は変わってきます。専門家のなかには、こうしたデリケートな問題のお子様への伝え方について、ご相談に乗ってくださる方もいらっしゃいます。臨床心理士や、子どもの心理に詳しい専門家のご助力を得ながら、お子様にとって最も負担の少ない形で進めていただくことをお勧めします。
結びに
妊娠・出産後に「妻帯者だった」と判明したケースは、ご依頼者の人生に深い傷を残す経験です。けれども、事実関係の確認、法的な手立て、行政の支援、心のケア、お子様への対応など、それぞれの領域で専門家と連携しながら、一歩ずつ進んでいける道は必ずあります。ご依頼者の強さに敬意を感じています。お一人で抱え込まず、まずはご相談ください。