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海外赴任先での同居の疑い ─ 「二重生活」の可能性に向き合う
配偶者の海外赴任が長期にわたる場合、ご依頼者から伺うご相談のなかに、極めて重い類型のものがあります。「赴任先で、別の方と一緒に暮らしているのではないか」「現地で家族のような生活を築いているのではないか」「二重生活になっているのではないか」。これらは、単なる不貞関係を越えて、配偶者がご家族に隠して別の生活基盤を持っているのではないか、というご懸念です。
2001年からこの仕事を続けるなかで、こうした「海外での二重生活」の疑いに関わるご相談は、数としては多くはありませんが、ひとたび浮上すると重い案件となります。本稿では、こうした疑いにどう向き合い、どのように確認していくかについて整理してお伝えします。
「二重生活」が疑われる兆候
海外赴任先での二重生活が疑われる時、いくつかの兆候が、ご依頼者の手元に蓄積していることが多くあります。家計の動きの不自然さ。赴任先での生活費が、単身赴任に必要な水準を明らかに超えている。家賃の支払いが、社宅や寮の規模に見合わない大きさになっている。ご家族との連絡パターンの変化。連絡の頻度が減っている、特定の時間帯にしか繋がらない、ビデオ通話を避けるようになった。帰国頻度の減少。当初は定期的に帰国していたのが、徐々に間隔が空くようになる。配偶者の説明と現実のずれ。説明されている赴任先での生活と、ご依頼者がご自身で得た情報のあいだに、明らかなずれがある。これらの兆候が複数重なっている場合、二重生活の可能性を視野に入れた調査の組み立てが必要になります。
確認のための「最初の一歩」
二重生活の疑いを確認するための最初の一歩は、配偶者が赴任先で本当に「単身」で暮らしているかどうかの確認です。これは、海外現地での調査が必要になる場面が多い領域です。現地の調査会社との連携、現地での観察、配偶者の住居の生活実態の確認。これらは、日本側からは確認できない情報です。費用と期間がかかりますので、ご依頼者と「どこまで確認したいか」を慎重に擦り合わせます。予算の都合で現地調査が難しい場合、日本側でできる確認に集中することになります。
帰国時の動きから二重生活を読む
配偶者が日本に一時帰国した時の動きにも、二重生活の兆候が現れることがあります。帰国してから、ご自宅に直行せず、別の場所に立ち寄る。帰国中も、特定の時間帯に集中して連絡を取り合っている。日本国内で、配偶者と関係のある別の方と会っている。帰国時の荷物や持ち物のなかに、ご依頼者が知らない方の痕跡がある。これらは、日本側の調査で確認できる範囲の事実です。配偶者の帰国予定が分かった段階で、帰国時の動きを観察する計画を組みます。
お子様がいる「現地家族」の可能性
二重生活の疑いのなかで、最も重い類型が、現地で配偶者が新しい家族を作っており、お子様までいる可能性が浮上するケースです。この場合、調査の組み立ては極めて慎重な配慮が必要になります。ご依頼者の心理的負担が、通常の不貞案件とは比較にならない大きさになります。また、確認できた事実をどう活かすかについても、ご依頼者の人生全体に深く関わる判断が求められます。
こうしたケースでは、現地調査の組み立てを慎重に進めるとともに、ご依頼者の心のケアの専門家へのご相談を、強くお勧めしています。事実を確認することと、それを受け止めて先に進むことは、別の段階の作業です。弁護士の先生との連携も、通常以上に重要になります。国際的な親権の問題、慰謝料請求の手続き、財産の整理、お子様の処遇に関する法律実務など、多くの専門的な論点が同時に絡む案件になります。
国際的な制度の存在
国際的な要素を含む案件では、各種の国際的な制度の存在を、視野に入れる必要があります。国際的な子の連れ去りに関するハーグ条約、国際結婚における離婚の準拠法、国際的な慰謝料請求の手続き、外国の判決の日本での執行など、複雑な制度が関わってきます。これらは、私たち調査会社の専門領域ではありません。けれども、調査の組み立ての段階から、こうした論点があり得ることをご依頼者と共有し、専門の弁護士の先生のご助言を仰ぎます。
確認した後の選択
仮に二重生活が確認された場合、ご依頼者がどう動かれるかは、いくつかの選択肢があります。慰謝料請求と離婚の手続きに進む、別居を継続する、時間をかけた話し合いを続ける。どの選択を取られるかは、ご依頼者の人生にとって極めて重い決断です。私たちは、調査結果をお渡しするだけでなく、ご依頼者がこの決断と向き合われる時間にも、できる範囲で寄り添います。
「事実を完全には確認しない」選択もある
最後にもう一つ、申し上げておきたい選択肢があります。それは、「事実を完全には確認しない」という選択です。二重生活の疑いは強いけれど、確認のための海外調査には膨大な費用と期間がかかる。確認した後の人生の負担も大きい。すべてを確認するのではなく、「ある程度のところまで分かったところで、ご自身の判断を下す」という選択もあり得ます。「すべてを明らかにする」ことを善とはしていません。ご依頼者の人生全体のバランスを考えた時、どこまでを確認するか、どこまでで止めるかは、ご依頼者ご自身がお決めになる領域です。
結びに
海外赴任先での同居の疑いは、不倫案件のなかでも、最も重い類型のひとつです。確認の困難、ご依頼者の心理的負担、お子様のいる現地家族の可能性、国際的な制度の複雑さ、確認後の選択の重さ。これらすべてに対して、調査会社単独で対応できる範囲は限られています。現地調査会社、弁護士の先生、心のケアの専門家、国際業務に詳しい行政書士の先生など、複数の専門家との連携のなかで、ご依頼者の人生を支える構造を作ります。重い案件であればこそ、誠実に向き合い続けます。