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再相談時の初回打ち合わせ ─ 何を、どこまで、どう聞くか
立て直し案件の入口は、ほぼ例外なく「再相談」の場から始まります。他社で一度調査をされた依頼者が、何らかの不全感を抱えて、私たちのところへいらっしゃる。その最初の打ち合わせをどう設計するかで、立て直し全体の流れがほぼ決まる、と考えています。
2001年からこの仕事を続けるなかで、再相談の最初の打ち合わせは、新規の相談とは性格がまったく違うものだということを、繰り返し実感してきました。新規の相談者がご自身の状況だけを抱えてこられるのに対し、再相談の方は、すでに前回の経験を背負っておられる。お話の中身も、聞き方も、変えなければ前に進めません。
まず「聞く」より「整える」
通常の相談であれば、依頼者のお話を順に伺いながら、状況を整理してまいります。けれども再相談の場合、依頼者は最初から多くのことを話したい、伝えたい、というご様子で来られることが多いものです。前回の調査でうまくいかなかった経緯、感じておられる不満、現在の困りごと。これらが堰を切ったように溢れ出てくる場面もあります。
そういう時、無理にお話を遮らず、まず一通り受け止めます。けれども、頭の中では「これは前回の経緯」「これは現在の状況」「これは今後のご希望」と、伺った内容を三つの引き出しに分けながら聞いています。打ち合わせの後半では、その三つの引き出しを依頼者と一緒に確認してまいります。整理することで、依頼者ご自身も、頭の中の混乱がほどけてまいります。
前回の経緯は責めず、構造を見る
前回の調査の経緯を伺う時、感情の部分と事実の部分を、できるだけ分けて受け止めるようにしています。依頼者がご不満をお持ちになるのは自然なことです。けれども、前の事務所のやり方を一緒になって責めることは、私たちの仕事ではありません。むしろ、何がどう進んで、どこで何が起きたか、その構造を冷静に把握することのほうが、立て直しの設計に直結します。伺ったお話のなかから、「ここは前の事務所の判断の問題」「ここは状況の偶発」「ここは情報共有の行き違い」と、原因の種類を見分けていきます。種類が分かれば、立て直しで何を改めればよいかも自然と見えてまいります。
「今ある材料」を最初に確認する
再相談の打ち合わせで、できるだけ早い段階で行うのが、「今ある材料」の確認です。前回の調査でどのような報告書を受け取り、どんな写真や記録が手元に残っているか。これを最初に把握しなければ、新たに必要な調査の範囲が見えません。依頼者によっては、報告書を持参してくださる方もいれば、まだ受け取っておられない場合もあります。データだけが手元に残っている、紙だけしかない、それぞれです。現在お手元にあるものを、できれば打ち合わせの場で一緒に並べていただきます。並べてみると、依頼者にも「自分が何を持っているか」が改めて見えてまいります。前回の調査が無駄ではなかったこと、活かせる素材があることに気づいていただけると、その後の打ち合わせの空気が少し軽くなります。
ご希望と現実の幅を一緒に見る
打ち合わせの中盤からは、これから何を望まれているか、を伺っていきます。「離婚に進みたい」「夫婦関係を続けたいけれど真実を知っておきたい」「相手方への請求を進めたい」「とにかく今の状況に区切りをつけたい」。ご希望は人それぞれで、優劣はありません。ただ、ご希望を伺ったあとで、必ず「現実的にどの程度まで届く可能性があるか」をご一緒に見ていただくようにしています。前回の経験を踏まえれば、ここまでなら近い、ここから先は時間がかかる、というラインが見えてまいります。ご希望と現実の幅を最初に共有しておくこと。これが、立て直しの途中で気持ちが折れない大切な準備になります。
守秘と安心の場を確保する
再相談の場で見落とせないのが、依頼者の「安心」の確保です。前回の経験で、相談の内容が漏れたのではないか、と感じておられる方もいらっしゃいます。そうした不安があると、こちらにも本当のところをお話しいただきにくくなります。初回の打ち合わせで、守秘の方針を改めて明確にお伝えするようにしています。書面でも口頭でも、お話の内容は外部に出ないこと、調査員にも必要最小限の情報しか伝えないこと、データの保管と廃棄の方針。お話が安心して進められる場を整えるのが、再相談における最初の責任です。打ち合わせの場所についても配慮します。事務所までお越しいただくことが難しい場合は、ご都合の良い場所でお会いすることもあります。
「決めない」勇気を共有する
再相談の場でもうひとつ大切にしているのが、「初回打ち合わせのなかで全てを決めない」という姿勢です。依頼者のなかには、その場で結論を出して安心したい、というお気持ちで来られる方もいらっしゃいます。けれども、立て直し案件の方針は、その場の勢いで決めてしまうと後で揺り戻しが来ることが多いものです。初回の打ち合わせで方向性の見立てだけを共有し、契約や具体的な調査着手は、依頼者がご自宅で一度お考えになってからにしていただくことが少なくありません。前回の契約も「その場の流れ」で進んでしまった経験をお持ちであれば、なおさら一拍置いたほうがよい。決めないでお帰りいただくことが、依頼者を引き止めない態度のように見えるかもしれません。けれども、長く続く立て直しの道のりを考えれば、最初の一拍は決して無駄ではない、と考えています。
結びに
再相談の初回打ち合わせは、立て直し案件のすべてを決めると言ってもよい場面です。ここで依頼者と私たちが、同じ方向を向けるか。前回の経験を引きずらず、けれども無視せず、次の一歩を組み立てられるか。初回の打ち合わせに、時間を惜しまず使うことにしています。ご相談の入口こそ、立て直しの土台を作る場所だからです。慌てて方針を決めるよりも、最初に丁寧に整える。その遠回りが、結果として立て直し全体をいちばん早く前へ進めてくれる、と感じています。